要約に向く資料と、向かない資料の見分け

指示を工夫する前に、その資料が要約に向いているかを見ておくと空振りが減ります。見極めは2段階です。

第1段階は、説明が地の文で完結しているか。 長い解説記事・議事録・レポート・解説PDFのように、文章を追えば筋が通る資料は要約と相性が良い部分です。逆に図やグラフが本体の資料は、ここで外れます。数値の読み取りの正確さは形式やサービスで変わるため断定できません(要確認)。

第2段階は、短くすると意味が変わる文章でないか。 第1段階を満たしていても、契約書・規約・仕様書の条件部分は「ただし」以降が結論を左右します。この種の資料は全体像の把握までを要約に任せ、判断に直結する条項は原文で読む分業にすれば無理がありません。

資料の種類とは別に、材料そのものが壊れている場合もあります。話者の区別がつかない文字起こしのように、入口が崩れていれば要約もそのぶんずれます(後半の会議の章で詳しく扱います)。

この記事の根拠は、動画版と同じ範囲の公開情報です。時間の試算は仮定を置いた計算で、独自の計測値ではありません。扱うのは利用者側の運用に限り、各サービスの入力上限や添付機能は改定が多いため個別の数値は書いていません(要確認)。

長い資料は意味の切れ目で分けて、2段階で統合する

一度に渡しきれない資料は、分けてから統合する2段階にすると安定します。分けること自体が目的ではなく、粒度をそろえるための工程です。

  1. 意味の切れ目で分ける: 章や見出しの単位で区切ります。文字数で機械的に切ると話の途中で文脈が切れ、その部分の要約だけ精度が落ちます。
  2. 同じ指示で各ブロックを要約する: 指示を毎回そろえるのが肝心です。ぶれると粒度の違う要約が混ざり、統合の段階で軽重が狂います。
  3. ブロック要約をまとめて渡し、通しの要約を作らせる: 「同じ資料を分けて要約したものです」と添えて全部渡します。

ブロックごとの要約は捨てずに残してください。統合で落ちた情報を探すとき、原文に戻る前の中間地点として使えます。原文の見出しと対応づけておけば、あとから該当箇所を開くのも早くなります。

この分割と統合が毎日の作業になってきたら、上限の単位(文字数・回数・月あたりの生成量)と料金の関係をAIライティングツールの比較で確認してから課金を検討してください。

残す情報は「読む目的」で指定する

材料がそろったら、次は何を残すかです。目的を書かないと、AIは誰にでも当てはまりそうな内容を残して均すため、自分にとって肝心な一文から先に消えていきます。

残すものと落としてよいものを対で渡すのが、指示としては扱いやすい形です。あわせて、要約に任せず自分で原文を照合する項目も決めておきます。

読む目的残してほしい情報落としてよい情報原文で照合する項目
導入するか判断したい費用・条件・制約背景説明・宣伝文金額と適用条件
人に説明したい結論と理由を3つ細かい操作手順引用する固有名詞
リスクを知りたい例外・注意・免責利点の紹介免責の範囲と主語
作業に落としたいやること・期限・担当議論の経緯期限の日付
全体像をつかみたい元の見出しごとに一文具体例・引用なし(読む場所の選定用)

右端の列があると、要約を受け取ったあとの確認が短く済みます。全部を疑うのではなく、目的ごとに数か所だけ原文へ戻る形にできるためです。

最後の行は抜け漏れを防ぎたいときに使えます。見出しごとに一文を作らせると網羅型になり、どの章に自分の関心があるかが先に分かります。

出す形は、元の見出しとの対応と列名まで決める

長さや口調の指定は依頼文の一般的な作法なので、そちらはAIプロンプトのコツにまとめています。要約に特有で効くのは、次の2つです。

  • 元の見出しとの対応を残させる: 「どの章の話かを各項目の先頭に付けて」と頼むと、原文に戻る動線ができます。
  • 表の列名を固定する: 複数の資料を同じ形で要約したいときは、列名まで指定します。任せると資料ごとに列が変わり、並べて比べる段階でそろえ直す手間が出ます。

引用の付け方も決めておくと確認が速くなります。「該当箇所を原文から1文引用して」と添えれば、どこを開けばよいか探さずに済みます。

会議の文字起こしは「保留」を分けて出させる

会議の要約は、決まったこと・やること・決まらなかったことに分けて出させるのが定番です。このうち指定を忘れやすいのが3つ目の「保留」です。

保留を明示させないと、議論の途中で出た有力な意見が決定事項のように並ぶことがあります。参加していない人が読むと、決着した話として受け取られます。

  • 決定: 何がどう決まったか
  • 宿題: 誰が何をいつまでに
  • 保留: 結論が出ず持ち越した論点

入口の材料の質も、そのまま結果に出ます。話者が混ざった文字起こしでは「誰の発言か」が要約で入れ替わり、宿題の担当がずれる形で表面化します。専門用語が別語に化けた場合は、その語を含む論点が丸ごと薄くなります。

要約が毎回ずれるなら、頼み方より先に文字起こしの精度を見直したほうが早いこともあります。ツールごとの傾向はNotta と無料文字起こしツールの比較で整理しています。

要約特有の失敗3つと、直し方

AI全般の作り話への対処はAIハルシネーション対策にまとめているので、ここでは要約の工程で起きるものだけを挙げます。分けて渡す運用に入ると、次の3つが出ます。

症状起きている原因直し方
ブロックごとに詳しさがばらつく各ブロックの指示が少しずつ違う指示文を1つ決めて全ブロックに使い回す
統合すると重要な章が1行に潰れるブロック要約が同じ長さで並んでいる章ごとの重みを添えて統合させる
資料ごとに表の列が変わる列名を指定していない列名を固定し、該当なしは「記載なし」と書かせる

2つ目は気づきにくい失敗です。分割した時点で各章が等しい扱いになるため、原文では10ページある章と半ページの章が、統合後は同じ1行に収まってしまいます。

対策は、統合を頼むときに「この資料の主題は第3章です」と一言添えることです。あるいは章ごとの分量を渡し、長い章は厚めに残すよう指定します。

3つ目の「記載なし」を書かせる指定は、空白を推測で埋めさせないためのものです。列が空で返ってくるより、記載がないと明示されたほうが次の行動が決まります。

原文をどこまで読むか、要約前提の時間配分

要約を挟むかどうかは、一度モデル計算しておくと判断が早くなります。以下は仮定を置いた計算で、実測ではありません。日本語を読む速さは1分あたり400〜600字が目安とされます(資料によって幅があるため要確認)。

1万字の記事を通読する場合、1分500字なら約20分です(400字なら25分、600字なら約17分)。以下の試算は500字/分に統一し、0.5分単位で丸めます。

要約を挟む場合の配分を、次のように仮定します。

  • 依頼文を書いて本文を貼る: 約1分
  • 返ってきた要約(800字と仮定)を読む: 約1.5分
  • 自分に関係する2〜3か所(合計2,000字と仮定)を原文で読む: 約4分

合計で約6.5分です。この配分どおりに進んだ場合、差は約13.5分になります。縮んだぶんは速く読めたからではなく、読まない場所を決めたことで生まれています。

短い資料では旨みが薄くなります。2,000字の資料に同じ比率(要約は原文の8%・抜粋は20%)を当てると、要約経路は依頼1分+要約160字が約0.5分+抜粋400字が約1分で約2.5分、通読は約4分です。計算上は要約経路が速いものの差は1.5分ほどしかなく、指示を考える時間が1〜2分かかれば消えます。

よくある質問

要約は原文の何割まで短くしてよいですか?

割合で決めるより、残す項目で指定するほうが安定します。同じ1割に縮めても、費用と条件を残した要約と全体像を残した要約では中身が別物になるためです。目安が欲しい場合は、まず短めに作らせて、足りないと感じた章だけ詳しく作り直す二段構えが扱いやすいです。長さの指定は、残す項目を決めたあとの微調整として使ってください。

図やグラフが中心のPDFはどう扱えばいいですか?

地の文とキャプションだけを要約に回して全体の流れをつかみ、数値は図表そのものを開いて確認する分業にしてください。表がテキストとして選択できる資料なら、その部分を本文として貼れば扱いは安定します。画像として貼り込まれた表は、要約の材料には向きません。図の枚数が多い資料では、先に「図表の番号とキャプションだけ一覧にして」と頼むと、自分で開く図を絞り込めます。

要約した内容を社外向けの資料に載せてもいいですか?

数字・固有名詞・日付を原文で照合してからにしてください。要約は原文にない内容を足すことがあり、文章が整っているぶん見落としやすいためです。引用つきで出させておけば、確認は該当箇所を開くだけで済みます。あわせて、原文の表現がそのまま長く残っていないかも見て、社外に出す文章は自分の言葉に直しておくほうが安全です。

同じ資料を何度も要約し直すとき、前の要約はどうすればいいですか?

残しておく前提にすると、次の読み返しが軽くなります。別の目的で読み返すときに、原文をもう一度全部渡さずに、関係する章のブロック要約だけを材料にできます。資料が更新された場合も、変わった章だけ作り直して統合をやり直せば手戻りが小さく済みます。逆に通しの要約だけを残すと、どの章が薄く潰れたのかを後から追えないので、保存は原文と同じ場所にそろえておくと扱いやすいです。