この記事で扱う「安定しない」と、扱わないもの

「AIの出力が安定しない」という一言には、性質の違う2つの症状が混ざっています。先に分けておかないと、直しようのないものを直そうとして時間を使います。

1つは、同じ依頼文を投げても文章の言い回しが毎回変わるという症状です。これは生成の揺らぎで、仕組みとして起きるものなので、この記事では扱いません。依頼文の側で寄せられる範囲はAIプロンプトのコツにまとめています。

もう1つが、出てくる「形」が毎回違うという症状です。画像の絵柄が別物になる、表の列が入れ替わる、動画が想定と違う条件で出てくる。この記事が扱うのはこちらで、原因は揺らぎではなく、仕様を誰も決めていないことにあります。

想定しているのは、同じ種類の作業をくり返していて、そのたびに同じやり直しをしている人です。1回きりの調べものであれば、ここで書く「先に決める」手間は回収できません。

同じ題材は動画でも扱っていますが、記事は手元で切り分ける向けに組み直しました。やり直しの記録から項目を割り出す手順と、抜けやすい場面の早見表という、聞き流すより書き出すほうが早い形式に寄せています。

限界も先に書きます。扱うのは利用者側でできる切り分けだけで、各ツールの出力を並べて計測したものではありません。無料枠や書き出しの条件は改定が多いため、個別の数値は書いていません(要確認)。

やり直しの履歴から、決めていなかった項目を割り出す

何を決めていなかったかは、頭で考えるより直近のやり取りを見返したほうが早く出ます。同じ項目を2回以上直しているなら、その項目を最初に決めていなかったということだからです。

  1. 直した箇所を、項目名で書き出す: 直近で仕上げた1件を開き、作り直しを頼んだ箇所を全部書き出します。「もっと明るく」ではなく「絵柄」、「表を作り直して」ではなく「列の構成」というように、直した内容ではなく直した項目の名前で書きます。
  2. 2回以上出てきた項目だけ残す: 書き出した中で同じ項目名が2回以上出てくるものに印を付け、1回きりのものは落とします。
  3. その項目を最初に渡せたかを判定する: 残った項目を1つずつ見て、最初の依頼の時点で自分が言葉にできたかを考えます。

3で「言葉にできた」となる項目が、指示を足せば直る指定です。次から先に渡せば、そのぶんのやり直しは丸ごと消えます。

「言葉にできたはずなのに、渡しても結果が変わらなかった」項目は、道具側の仕様である可能性が高い項目です。ここがこの記事の中心なので、次の章で扱います。

「そもそも自分に決める基準がなかった」項目は、AIに残しておいてよい判断です。決めないまま任せるほうが速いこともあるので、無理に埋めなくて構いません。

項目名で書くところだけ、少し意識してください。直した内容で書くと1件ごとにばらばらの記録になりますが、項目名で書くと同じ項目が何度も出てくることに気づけます。何度も出てくる項目が、先に決める価値のある項目です。

言い方を足しても変わらない項目は、道具側の仕様で決まっている

指示の工夫でどうにかなる範囲と、どうにもならない範囲の境目を持っていないと、直らないものに時間を注ぎ続けることになります。やり直しを減らすうえで、ここを分けるのが一番効きます。

打ち切りの目安は、二段構えにしておくと楽です。同じ項目について2〜3回言い換えても結果が狙いに近づかないなら、次はその項目だけを短く単独で指示し直します。 そこまでやっても近づかないなら、それは指示側の問題ではありません。

単独にすると動くことがあるのは、その項目が長い依頼文の中に埋もれていたか、ほかの指定と矛盾していたかのどちらかだからです。指示で動く項目なら、単独で渡した時点で狙いに寄るはずですが、仕様で決まっている項目はどの言い方でも同じ場所に戻ります。

性質で言うと、動くのは出力の中身に関する指定、動かないのは出力の器と権利に関する条件です。後者は編集画面で何を書いても変わりません。

  • 絵柄の土台: 絵柄の言葉を足せばある程度は寄りますが、ツールごとの傾向そのものは動きません。合わない絵柄を言葉で押し切るより、傾向の近いツールへ移るほうが速いです。商用利用の条件と合わせてAdobe Fireflyと無料画像生成AIの比較で整理しています。
  • 書き出しの条件: 透かしが入るか、どこまでの解像度で出せるかは、編集をどれだけ丁寧にやっても変わりません。無料版でどこに線が引かれるかはFilmora無料版の制限はどこまで?にまとめています。
  • 対応している形式: 縦画面で出せるか、必要な拡張子で保存できるかも道具側です。あとから変換で回り道できる場合もあるので、その手当てはVideoProc Converter AIでできることを参照してください。

同じ製品でも、アプリ版とブラウザ版で条件が違うことがあります。自分が実際に使う側の条件を見ないと、調べたつもりでずれます。仕事で使うなら、商用利用の可否も同じタイミングで確認しておくと二度手間になりません。

粘るのをやめたあとの出口は3つあります。どれを選ぶかは、その項目が成果物にとってどれくらい重いかで決まります。

  • 道具を替える: その項目が外せないなら、ここで替えるのが結局いちばん速い道です。
  • その工程だけ外に出す: 全部を替えず、詰まった工程だけ別の道具に渡します。書き出しや変換のように後工程で足せるものは、この形にできます。
  • 要件のほうを下げる: その項目が本当に必要かを見直します。透かしが入っても社内で共有するだけなら困らない、という判断です。

注意点を1つ。ツールごとの絵柄や得手不得手に、一般的な優劣があるわけではありません。「どちらが優秀か」ではなく「自分が作りたいものに近い出力をするのはどちらか」で選ぶ話です。

指定が抜けやすい5つの場面と、先に渡す項目

決めていない項目は、決めないままでも何かしら返ってくるところが厄介です。エラーで止まってくれれば気づけますが、それらしいものが出てくるので、やり直して初めて抜けに気づきます。

下の表は、抜けやすい場面を5つ並べたものです。右端の列から逆に読むと、いま出ている症状から抜けている項目を引けます。

場面先に渡す項目渡さないと起きること
画像をつくる絵柄の方向と使う場所ツール既定の絵柄で出て、頼むたびに別物になる
動画を書き出す形式・画面の向き・置き場所編集は終わったのに、使える形で出せない
長い資料を読ませる読む範囲と答えの形全体をならした要約が返り、肝心の章が薄くなる
比較表をつくる列名と単位頼むたびに列が変わり、並べて比べられない
文章を下書きさせる読み手・長さ・出力の形一般論が返り、受け取ってから整形し直す

上の2つは、渡す項目の一部が前章の道具側の条件と重なります。画像の絵柄も動画の書き出しも、指示で寄せられる部分と道具で決まる部分が同居しているためです。だから、渡してみて動かなければ前章の打ち切り目安に切り替えてください。

下の3つは指示側で片が付く場面です。資料の読ませ方は要点だけ拾うAI要約で扱っているので、そちらを見てください。文章の下書きの頼み方は冒頭で挙げた記事の範囲なので、この記事では表の1行として置くにとどめます。

残る比較表は、列名と単位をこちらで決めて渡す、とだけ押さえておけば足ります。そろえて渡しておくと、複数回の出力をそのまま並べて比べられるようになります。

表をそのまま写して使う必要はありません。自分の作業で出てくる場面を2〜3行だけ足し、抜けやすい項目の名前を控えておけば足ります。

AIに残しておく判断:決めない方が速い部分

先に決めないほうがよい判断もあります。任せてよいのは、次の3種類です。

  • 案の候補出し: 見出し案、企画のたたき台、名前の候補。数が要る段階では、絞る前に広げたほうが結果的に速く終わります。
  • 言い回しの選択肢: 同じ内容の別の言い方をいくつか出させ、自分は選ぶ側に回ります。
  • 構成の並べ方: 章の順番や見せ方の案。自分の中に型がないうちは、並べてもらってから決めるほうが早いです。

3つに共通するのは、正解が1つに決まらないこと、こちらにまだ好みの基準がないこと、外れても捨てるだけで済むことです。決めた項目は出力の幅をそのぶん狭めるので、まだ幅が欲しい段階で決めると、自分の想定より良い案が出てこなくなります。

逆に自分で決めるのは、あとから直せない項目と、そろっていないと比べられない項目です。書き出しの形式や商用利用の可否は前者、列名や単位は後者にあたります。

決める・決めないの線引きには、もう1つ回数の軸があります。指定を固めるのにも時間はかかるので、その手間は同じ形の出力を何度も作る場合しか回収できません。

目安として、同じ形のものを3回以上作ることになったら決めて残す、くらいで足ります。作業の頻度が変われば線も動くので、決めた項目を惰性で使い続けないようにしてください。

道具側の仕様は、無料で片が付く順に確かめる

道具側の仕様と判定した項目は、当たる順番を決めてから確かめます。手当たり次第に当たると、お金をかけずに分かったはずのことに課金してしまいます。

順番は単純で、無料のまま片が付く項目を先に全部潰します。そこで残った項目だけが、お金を払って確かめる価値のある項目です。

無料側は、確かめ方まで決めておくと一度の作業でまとめて片が付きます。共通する要点は、条件をそろえることと、途中で止めないことです。

  • 絵柄は、条件をそろえて出す: 用途の違う指示を2〜3種類つくり、それぞれ同じ枚数ずつ出します。1枚ずつ別々の指示で出すと、ツールの傾向を見ているのか指示の差を見ているのかが切り分けられません。
  • 書き出しは、編集画面で止めずに通す: 短い素材を1本でよいので、最後の書き出しまで通します。透かしの位置と画質は編集画面のプレビューでは確定しないので、途中で見た印象のまま判断すると、そこだけ後から食い違います。
  • 規約は、全文でなく3項目だけ探す: 生成物の権利、商用利用の可否、クレジット表記の要否。この3つを手がかりにページ内を検索すれば、通読しなくても該当箇所に当たれます。

残るのは、自分の使い方の分量に左右される項目です。ふだんと同じ量を通してみないと上限に当たるかどうかは見えてきませんし、上位の出力の出来も無料の範囲では判断がつきません。

区切り方は製品ごとに違い、そこが変わると課金の判断も変わります。無料と有料の線がどこに引かれているかの実例はNottaの無料と有料は何が違う?で整理しています。

一度に全部を確かめようとしなくて構いません。無料側を潰した時点で替えると決まることもあり、そうなればお金を払って確かめる工程そのものが要らなくなります。

よくある質問

細かく指定したのに、その通りに出てこないときはどう切り分けますか?

その項目だけを短く単独で指示し直してみてください。長い依頼文の中に埋もれていたのか、ほかの指定と矛盾していたのか、そもそも道具側で決まっている項目なのかが、この一手で分かれます。単独にして動いたなら前の2つなので、依頼文の側を整理すれば直ります。単独にしても近づかなければ、本文で挙げた仕様側です。

一度決めた指定は、毎回貼り直すのですか?

作業の種類ごとにメモを1つ作り、項目名と決めた値だけを残しておくのが扱いやすい形です。依頼文を丸ごと保存すると、その作業専用になって使い回しが利きません。項目名と値だけなら、別の依頼にも移せます。更新するときは上書きせず追記しておき、増えすぎたところで整理すると、何をなぜ決めたのかを見失わずに済みます。

同じ指定を複数のAIに渡しても、結果がそろわないのはなぜですか?

指定が届く範囲そのものが道具ごとに違うためです。ある製品では指定できる項目が、別の製品では固定されていることがあります。そろえたいなら1つの道具に寄せ、複数を使い続けるなら、そろわない項目は成果物の要件から外してください。逆に、違いを見たくて比べる場面では、そろわないこと自体が判断材料になります。

先に指定を決めるほうが、かえって遅くなりませんか?

迷ったら決めずに始めて、2回目に同じやり直しをした時点で決める、で足ります。1回きりの作業で先に決めると、決める時間のぶんだけ確実に遅くなるためです。同じやり直しが2回出たということは、その先も同じ場所で止まる見込みが立ったということなので、そこが決め時になります。